ドリームキャスト(Dreamcast)の凄いスペックまとめ

どんなゲーム機だった?

当時、PlayStationにシェアを奪われていたセガサターンの次世代機として社運を賭けて開発され、1998年(平成10年)11月27日 セガ・エンタープライゼス(現:セガゲームス)が発売した家庭用ゲーム機です。

何と言ってもCMや番組で有名となった湯川専務の印象が強いですね。CMでは小学生のグループが「セガなんてだっせーよな」「プレステのほうがおもしろいよな」という完全な自虐ネタで大人気になりました。

ハードウェアの売上に多少貢献したものの、同世代であるPlayStation2やNINTENDO64にシェアを奪われ、ついに2001年1月15日の「構造改革プラン説明会」では本体200万台の不良在庫となったことを発表し、現在の「他社へのソフト供給」へ転換することになりました。

この在庫200万台を捌くため、日本では9,900円という投げ売り状態の破格の定価に改定しました。

このゲーム機のあるあるとしては、ビジュアルメモリの電池消耗が激しいため価格の高いCR2032電池を交換しないで使用することです。結構な人が本体の電源を入れるたびに「ピーーー!!」という高いビープ音を響かせてからゲームを遊んでいたように感じます。

性能・スペック

製品名
DreamCast (型名HKT-5000)
メーカー
SEGA
CPU
製品名
日立 SH4
CPUコア
128bitグラフィックス・エンジン内蔵RISC
動作クロック
206MHz
浮動小数点演算性能
1.4G FLOPS/秒
メインメモリ
メインメモリ
SDRAM
メモリ容量
16MB (64Mbit(8MB)×2)
グラフィック
製品名
NEC PowerVR2 DC 100MHz
ポリゴン描画性能
300万ポリゴン/秒
テクスチャメモリ
8MB
画像処理機能
Bump Mapping(バンプマッピング)
Fogging(フォギング)
Alpha Blending(アルファブレンディング)
Trilinear Filtering(トライリニアフィルタ)
MIPMAP(ミップマップ)
Anti-aliasing(アンチエイリアシング)
Multi-pass Rendering(マルチパスレンダリング)
Environment Mapping(環境マッピング)
Specular Effect(反射光エフェクト)
サウンド
サウンド
YAMAHA スーパー・インテリジェント・サウンド・プロセッサ – 32bit RISC CPU内蔵
同時発音数
64チャンネル PCM/ADPCM
サウンドメモリ
2MB
ドライブ
対応ディスク
GD-ROM
CD-ROM
対応フォーマット
DC用GD-ROM
CD-DA(音楽CD)
ドライブ性能
YAMAHA製 CD-ROM 12倍速(1800KB/秒) CAV(角速度一定)
その他
モデム
V34(33.6Kbps) V42/MNP5フルサポート
ビジュアルメモリ
CPU: 超低消費電力型8bit CPU
液晶 解像度: 横48dot 縦32dot モノクロ表示
サウンド: PWM音源 1ch
容量: 1Mbit(128KB)
OS
Microsoft Windows CE カスタム
GD-ROM
(Gigabyte Disc ROM)
最大容量 1GB
コントローラポート数
4
消費電力
22W

スペック解説

CPU

日立製作所(現在はルネサスエレクトロニクスに移管)が開発したSH-4プロセッサを採用している。セガの前世代のゲーム機である「セガサターン」も同社のSH-2プロセッサを採用しているため、実はSH系プロセッサの採用は2回目。SH-2/SH-4ともにセガのゲーム機用に設計開発されたもので、SH-4においてはRTCも内蔵している。このプロセッサはWindowsCE機やIPコアとしても提供された。

SH系のプロセッサはとても低消費電力、かつアーキテクチャや命令セットがシンプルであるため、プログラムを書くのが他のプロセッサに比べて簡単なのが特徴。

グラフィック

「PowerVR2」はNECとVideoLogicが共同開発したもので、グラフィックボードに搭載され単体発売もされている(※1)。これは元々ドリームキャスト用として開発されたものではなく、ATiやnVidiaのようにPC用グラフィックプロセッサとして製品展開させていたもの。実際発売されたのはドリームキャスト発売後から約1年半後だったため、生産はドリームキャスト重視で行われていたように思われる。

レンダリングの並列処理化やテクスチャ圧縮技術などを採用することで、300万ポリゴン/sec.、2億ピクセル/sec.の性能を実現。この性能は当時としてはやや時代遅れで、同時期の「nVidia RIVA TNT2」は900万ポリゴン/sec.、3億ピクセル/sec.と引き離している。しかし、PowerVRシリーズの「低消費電力」「低発熱」の特徴がVR2でも発揮され、冷却や電源にコストを取られないためドリームキャストに採用されたのではないかと推測できる。

「PowerVR2」は今では当たり前になったテクスチャ圧縮やバンプマッピングのサポートなど、かなり先進的な技術も取り込まれ、当時としてはかなり魅力的な仕様のチップあった。3D APIはDirect3DとOpenGL、PowerVRシリーズ独自APIである「SGL」をサポートしている。従来のPowerVRと比べDirect3Dへの対応度は大幅に向上し、表示されるグラフィックの質も良くなっている。

(※1) PowerVR2アーキテクチャの最新ビデオカード「Neon 250」発売
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/991023/etc_neon250.html

サウンド

サウンドエンジンにはヤマハのスーパー・インテリジェント・サウンド・プロセッサを採用している。同社が開発した電子楽器のXGフォーマットに準拠した32bitRISCプロセッサを内蔵し、64チャンネルのADPCMが再生可能である。

ADPCM方式は今では多く採用されているが、方式としては自然界の音は多くの場合連続的に変化するという性質を利用してPCMのデータを音質を損なうことなく圧縮しているものである。圧縮率はMP3などに劣ってしまうが、高速な圧縮展開が可能であることと処理遅延が非常に小さいという性質があるため、データ量の削減とデータ展開の高速性を求める場合にほとんどADPCM方式が採用されている。

通信インタフェース

ゲーム機では初のネットワーク初期装備で、33.6Kbpsモデムを搭載している。インタフェースの着脱が可能で、別売の100BASE-T(※2)仕様「ブロードバンドアダプタ」を装着することでブロードバンドでのネットワークを実現している。(実際にはソフト側で10BASE-Tとしてしか使われなかった)

標準モデムがあることでゲームソフトのネットワーク対戦が簡単に行えるほか、アクセスの「NetFront」をベースとしたWebブラウザ「ドリームパスポート」が付属しているため、ネットワークさえつなげばWebページを閲覧することもできる。今となっては当たり前となった「インターネットによるエンターテイメント」の先駆けだった。

※2「100BASE-T」はカテゴリ3UTPケーブルを使える「100BASE-T2」「100BASE-T4」、カテゴリ5以上のUTPケーブルを使用する「100BASE-TX」の総称。

メディア

セガとヤマハで共同開発した「GD-ROM」を採用している。基本的にはCD-ROMのピット幅を小さくして容量を大きくする倍密化が行われているものだが、以下のように特殊な構造になっている。これは不正コピー対策をハードウェア側で行うハードウェアプロテクトを施す意味を持っていると思われる。

内周部:ISO9660フォーマット 容量約35MB 一般のCDプレイヤーで再生しないよう注意を喚起する音声や、PC向けデータが入っている。
外周部:独自高密度フォーマット 容量約984MB ゲームのデータを格納。最外周部からデータが書き込まれているため、容量が少ないデータでも高速に読み込むことができる。
中間部:データを持たない空間 仕切りの役目。

記憶媒体

ドリームキャストでは「ビジュアルメモリ」を外部記憶として使用する。ただの記憶媒体として使用するだけでなく、専用のソフトウェアを1つだけダウンロードして再生する機能が組み込まれており、それ自体を「ゲーム機」として利用することが可能である。また、コントローラにセットすることで手元の画面にゲームと連動した映像を表示することもできる。

しかし、問題も多く抱えていた。1つは、ビジュアルメモリはボタン型電池(CR-2032)を2個使用するが、使い方によっては数時間で電池切れを起こすほど電池の消耗が異常に早いことである。記憶媒体はフラッシュメモリなので電池が切れてもデータが消えることはないが、ドリームキャストに通電するたびに大きな「ピー」音(たまごっちやデジモン死亡時のような音を大きくしたもの)が鳴ってしまう。
もう1つは、搭載されているフラッシュメモリの容量に比して携帯ゲームとしての予約エリアがかなり大きかったため、ユーザファイル容量を少なくしていた。そのため思いのほかセーブデータが記録できず、不満の声が大きかった。後に携帯ゲーム機能を排除して全てユーザファイル容量として扱える「メモリーカード4X」を発売した。